背中

やがて、彼と出会って一年が経った
奥底にしまいこんだ気持ちに
もうちゃんと向き合ったつもりでいた

学校で行われるサークルの展示に出展
今日の分だよ、と渡された書き込まれたアンケート用紙
好きな作品の項目に
自分の作品の名前を見つけて心を躍らせていると
後輩が今受け取った追加分です、とあたしに差し出した

そこにはあたしの作品の名前と
『キレイだと思います』
アナタの右肩上がりの字があった
彼の名前がある
胸が熱くなった
今なら、今なら追いかければ間に合うかも
友達の制止も聞かずに飛び出した

外は出会った時と同じ桜が咲いている
花びらが舞う道の先に
彼の背中を見つけた
呼び止めればできた、簡単に
彼が優しく振り向いてくれるだろう
そして変わらない笑顔で笑ってくれる
でも
それじゃダメなんだ
それじゃ、変わらないんだ、つらいんだ

好きなら、無条件で幸せになれるんだと思ってた
でも違った
ずっとずっと苦しくて、愛しくて、もっと欲しくなる
あたしはそれに耐えられない

アナタが好き、好き、好きよ
だから、自分の気持ちより、この埋まらない距離が重かった

今度こそ、ホントにさようなら
今流す涙はその証
でも、でもね

この先誰に恋をしても、アナタほど求めていた恋はきっとないの

次にアナタに会う時は
ちゃんと笑っていられるようになるから
だから
もう少しだけ好きでいさせてね
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